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いきいき365日

ピロリ菌除去で潰瘍治療

2013年05月01日


 胃の痛みやむかつき、もたれ、吐き気などの症状や、吐血や下血など重い症状をひきおこす胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、ヘリコバクター・ピロリという菌が重要な原因であることが明らかになりました。
 薬をやめると繰り返す胃潰瘍や十二指腸潰瘍が「この菌を除菌することで起こらなくなった」ということをたびたび経験します。
 このヘリコバクター・ピロリ菌に対する除菌の保険適応が潰瘍だけでなく、ピロリ菌感染胃炎まで広げられ、胃内視鏡で慢性胃炎の所見があり、ピロリ菌に感染していることが検査で認められた方に対し、平成25年2月22日より除菌治療が可能となりました。

ピロリ菌の発見
 1979年オーストラリアの病理専門医ウォーレンが、胃炎をおこしている胃粘膜にらせん菌が存在していることを発見しました。
 ウォーレンは同じ病院の研修医のマーシャルと共に研究をすすめ、この菌によって胃炎がおこると考えました。1984年マーシャルは培養したらせん菌の固まりを自ら飲み込む人体実験を行い、急性胃炎をおこした胃粘膜にらせん菌が存在していることを確認しました。ピロリ菌は胃に感染した場合、初感染のときは急性の胃炎や下痢を起こし、ほとんどの場合はそのまま菌が排除されるのではなく胃内に定着します。持続感染を起こして、委縮性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍のリスクが上昇することがわかってきました。
 この菌の発見で2人は2005年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

胃酸の中でも生きるピロリ菌
 胃の中には胃酸がありpH1~2の酸性状態です。ピロリ菌が活動するにはpH6~7の中性が最適で、4以下では生きられません。しかしピロリ菌はウレアーゼという酵素を持っており、胃の中の尿素をアンモニアに変え、このアンモニアのアルカリ性がピロリ菌の周囲の環境を中性にして、強酸の中でも生きられるようになったのです。このピロリ菌の作るさまざまな分解毒素や病原因子、またそれらを退治するために動員された白血球の組織障害によって炎症が起こります。それが慢性化することによって胃の委縮や胃がんのリスクも上昇する可能性も指摘されています。

胃がん発生のリスク5倍
 ヘリコバクター・ピロリ菌の陽性者では陰性者と比較して胃がんの発生リスクは5倍といわれています。
 また、胃の委縮で胃がんのリスクも上がるといわれており、ピロリ菌感染陽性でかつ、委縮性胃炎ありのグループは、陰性で委縮なしのグループと比較して、胃がんの発生リスクは10倍となっています。しかしピロリ感染は国や年齢によって差があります。
 日本は比較的衛生状態の悪い時期に育った高齢者が、他の先進国に比べ、感染率が高い傾向にあります。そこで日本人に多い胃がんに対し、日本人に多いピロリ菌感染を慢性胃炎の段階で治療することで、重い病気を予防するために、ヘリコバクター・ピロリの除菌の適応範囲が広がりました。

まだまだわからないことも
 すぐにでもピロリ菌撲滅のための治療をしたほうがいいと思われますが、ピロリ菌に関してまだわからないこともあり、菌を除菌することで、一部の人に逆流性食道炎をおこすかもしれないという人もいます。また、若者のピロリ感染率は低いため年齢差や個人差があり、高齢者でもピロリ菌感染者が必ず胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどを発生するとは限りません。
 ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の除菌のためには、①胃カメラによる慢性胃炎の所見があること、②ヘリコバクター・ピロリ感染を測定のいずれかで確認すること、という①、②の両方を実施することが必要です。
 今回の除菌治療の拡大は関係する薬品の効能・効果の追加なので感染診断、除菌判定、除菌治療法は従来と変わりません。

除菌の成功率は80%
 一次除菌の成功率は80%であり、除菌しきれなかった20%に対しても二次除菌の成功率は90%と報告されています。ただ除菌を成功させるためには、薬をきちんと1日2回、一週間飲むことが大切で、途中でやめてしまったりするとかえって薬が効きにくい菌が出現する可能性があります。再開しても必ずしも除菌の効果が認められない場合もでてきます。もちろん薬である以上副作用もないとはいえません。相談できる医師のもとできちんとした診断、治療をすることが大切なので、胃の具合が気になる方はぜひ一度、戸塚病院や診療所でご相談下さい。