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いきいき365日


子どもの発達障害

  2013年12月17日
 以下は全日本民主医療機関連合会(略称 全日本民医連)の月刊誌「いつでも元気」に掲載された記事です。著者の香川・へいわこどもクリニック小児科医 中田耕次医師から快諾を得て掲載することができました。改めて中田耕次医師に感謝いたします。

 
早期発見で2次障害防止を
 成長につれて目立たなくなる例も

 近年、発達障害という言葉がよく聞かれるようになりました。「落ち着きがない」「注意散漫」「わがまま」「集団行動がとれない」など、従来なら”ちょっと気になる子どもだけれど、性格や個性の範囲”とみらていたのが、「発達障害ではないか」と保護者が心配になって小児科を受診する例や、学校・園が受診をうながす例などが増えています。

発達障害とは
 発達障害とは、どのような障害のことを言うのでしょうか。
 2005年に施行された発達障害者支援基本法では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」と定義されています。
 つまり「発達の過程で明らかになる行動やコミュニケーションなどの障害で、現在では根本的な治療はないが、適切な対応をすることによって社会生活上の困難は軽減される障害」(平岩幹男著『自閉症スペクトラム』より)という定義がわかりやすいでしょう。最近では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」を総称して、「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれるようになってきています。
 今回は、発達障害の代表的な疾患である自閉症スペクトラム障害と、注意欠陥多動性障害について、お話しします。

自閉症スペクトラム障害とは
 自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)は、遺伝による病気ではありません。たしかに遺伝要因もありますが、高血圧などと同じように、環境要因など、多くの事柄が関与する病気です。
 「対人・コミュニケーションの障害」と「制限された反復的および常同的な興味および行動(こだわり、想像力の欠如の障害)」という2つの障害が根底にあり、次のような特性がみられます。なお、知的障害(精神遅滞)の合併はまったくない場合から重度までさまざまです。

①人とかかわることが苦手
 他者の心理を受けとめながら行動することが困難です。多人数との会話は整理できず、混乱します。また、言葉の裏の意味、冗談や比喩を理解するのが苦手です。社会や学校、職場の慣習・慣行などがわからず、周囲からは「場の空気が読めない」と指摘されたりします。
 幼児期では、言葉の遅れが多くみられます。言葉ではないコミュニケーションも苦手で、表情や声の抑揚(怒り、悲しみ、楽しさ)などから相手の感情を理解することができません。

②こだわりが強い
 幼児期では、物へのこだわりがあり、成長とともにさまざまな種類のこだわり(場所、順序、色、時間など)をもちます。たとえば、電車や駅の名前、昆虫の名前などにこだわり、「○○博士」などと呼ばれます。
 一番になることにこだわる特性もあります。小学校高学年になると、気配りすることにこだわり過ぎて、ストレスをため込む場合もあります。

③感覚の異常、強い不安
 特定の音(たとえば赤ちゃんの泣き声)が苦手です。光の刺激に過敏だったり、特定の肌触りに不快感を示したりします。痛みには鈍感です。予測できない場面や、一度失敗した場面などに直面すると、強い不安を示します。

スペクトラムとは
 以上に述べたような特性が、日常生活ではほとんどわからない人から、はっきりわかる人まで、明確な境界がなく、いろいろなタイプがあります。
 「スペクトラム」という名前は、「いろいろなタイプがある」という意昧だととらえていいでしょう。最近ではASDとしての特性はあるが、生活・仕事上支障のない場合を「非障害自閉症スペクトラム」と呼ぶこともあるようです。
 この非障害自閉症スペクトラムを含めると、ASDを抱える人は人口の10%と言われていますが、学校や生活の場でしっかりした対応が必要な人は人口の0.3%と考えられています。

対応・支援は
ASDを抱える子どもを、保護者や周りはどのように受けとめ、支援したらいいのでしょうか。

①特性を”長所”として
 こだわりの強さは、「熱心で集中力がある」「ルールを守る」ととらえることができますし、時や場、人に合わせない、場の空気が読めないという特性は、「独創的」ととらえることができます。事実、成人になってそのような特性が職場で評価を受けることもあります。特性を長所として活かせるような保護者や周囲の理解・支援が必要です。

②得意な分野をのばす支援を
 誤解されやすいのは、その支援方法です。不得意な分野を訓練するのではなく、得意な分野をのばすことに力を入れるようにします。
 ASDの特性は、訓練で消去することはできません。したがって、不得意な分野を訓練しても効果はそれほどありません。むしろ親の焦りは子どもへの強制や叱責となりやすいため、後で述べる二次障害の原因となります。

③排除しない環境・教育づくり
 現代社会では、学校や職場で、周りに合わせることが苦手な人たちを極端に忌避する風潮があります。そのため「マイペース」「場の空気を読めない」ことを理由に、集団から排除されたり、いじめにあったりすることがあります。
 ASDを抱える子の発達を保障するためには、ASDの特徴にあわせた環境づくりと教育のあり方が必要です。

注意欠如多動性障害とは
 注意欠如多動性障害(以下、ADHD)は、不注意(注意散漫)・多動性・衝動性を特徴とします。
 これらは、子どもの育つ環境や保護者のしつけの影響とみられがちですが、そうではなく、中枢神経(主に前頭前野)のはたらきの偏りが原因です。児童・生徒の約3%がADHDの疑いがあると言われています。
 それぞれ、以下のような特徴があります。

不注意(注意散漫)
①ひとつのことに集中するのが難しく、集中力が長続きしない。好きなことや興味あることには集中できるが、切り替えが難しい。

②周りの刺激に気をとられやすく、すぐに気がそれてしまう。細部にまで注意を払えなかったり、簡単なことを間違えたりする。

③忘れっぽく、よく物をなくす。
 そのほか、面とむかって話しかけられているのに聞いていないように見える。課題や活動を順序だてておこなうことが難しい。また、同じことを繰り返すのが苦手などの特徴があります。

多動性
①無意識に体が動き、それを抑えきれない。授業中、座っているべきときに落ち着いて座っていられない。

②おしゃべりを自分でコントロールできない。遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しい。

衝動性
①自分の感情を抑えることが苦手。

②自分の発言や行動を抑えることが苦手。質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。順番を待つのが難しい。他人の行動をさえぎったり、邪魔をする。

ADHD診断の留意点
 これまで述べた特徴は、多くの子どもに少なからず見られます。ですから、これらの症状があるからというだけではADHDと診断できません。①これらの特徴が7歳になる前に現れている、②年齢及び発達段階から見て程度が著しい、③これらの特徴のために生活に支障をきたしている、という3点が診断の前提となります。なお、通常、知的障害(精神遅滞)は合併しません。

対応・支援は
 対応・支援としては、①環境調整、②ペアレントトレーニング、③薬物療法があります。

①環境調整
 学校や家庭で、ADHDの症状が出にくい環境をつくります。
 「時間の整理」として、「何をどのような手順でおこなうのか」「どうなったら終わりなのか」「何をして待てばいいのか」などを子どもに示してから、課題をおこなうようにします。「空間の整理」としては、机の上を整理したり、壁や黒板など見えやすい場所に興味をひくような物を置いたり飾ったりしない。教室での席は前にするなどを実施します。

②ペアレントトレーニング
 ADHDへの理解を深め、子どもへの対応の方法を学ぶ保護者(ペアレント)のための支援プログラムです。残念ながら、実施できる医療・教育機関が極めて少ないのが現状です。

③薬物療法
 中枢神経刺激剤と非刺激剤の2種類の薬剤を使う治療法です。改善効果は60~70%と言われています。
 薬物療法の目的は、子ども自身が自らの行動を統制するスキルや他人との協調性を身につけやすくすることです。そのことが、自身の自尊感情を高めることにつながります。
 学校生活に支障をきたすという理由で、学校の担任から「病院に行って薬を処方してもらうように」と言われて受診に来る例が、珍しくありません。このような場合、医療機関は学校側と面談し、環境調整を十分におこなうことを前提に薬物療法を開始します。軽症の場合は、環境調整のみで十分に対応できる場合が多く、安易な薬物療法はするべきではないと、私は考えます。

早期発見の重要性
 発達障害を抱える子どもは、その特性や特徴から「仲間と良好な関係をきずく」「課題をやりとげて、満足感や達成感を感じる」などの経験が乏しくなります。家庭や学校では、ほめられるよりも、叱られたり注意されたりする方が圧倒的に多いため、自己肯定感をはぐくむ機会に恵まれないまま、自己を形成していきます。
 深刻なのは、自己肯定感が低いために周囲とのあつれきやトラブルを繰り返した結果、いじめや不登校、引きこもり、強迫神経症、不安障害、チックなどの二次障害を引きおこすことがあることです。
 したがって、二次障害を防ぐためにも、発達障害を早期に発見し、適切な環境づくりや対応、治療が重要です。現在、就学前となる5才児健診をおこなうことで、早期発見と治療・支援へつなげる動きが全国で始まっています。

制度の活用を
 発達障害には、レントゲンや血液検査で明確な診断ができる病気とは違い、明確な指標がありません。そのため、診断に曖昧さがつきまとうことは避けられません。
 医師によって診断が食い違ったり、また幼児期にASDやADHDと診断された子どもであっても、成長するにつれてその特性や特徴が目立たなくなっていくことは、十分にあり得ます。正確な診断と同時に、どのような支援が必要なのか見極めることも、非常に大切です。
 発達障害は、障害者自立支援法にもとづく自立支援医療(精神通院医療)の対象で、通院治療における外来窓口負担が軽減される制度があります。お子さんに気になる症状がある場合は、小児科もしくは各都道府県にある発達障害者支援センターにご相談ください。

 気になることがあれば、市町村の窓口や都道府県等の発達障害者支援センターに相談することができます。

発達障害者支援センターとは
 各都道府県等で、発達障害者の日常・生活(行動やコミュニケーション等)についての相談支援や発達支援、就労支援(必要に応じて公共職業安定所、地域障害者職業センター及び障害者就業・生活支援センター等と連携)、普及啓発及び研修をおこなっています。
 また、障害の特性とライフステージにあわせた支援を提供するために、医療、保健、福祉、教育及び労働等の各関係機関と連携を図ります。
(厚労省ホームページパンフレット「発達障害の理解のために」より)