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いきいき365日


知っておきたい自民党改憲(草案)のゆくえ

稲生弁護士 イメージ写真

2016年2月01日
 機関紙「医療生協かながわ」の2016年2月に載った記事を掲載しました。

問 憲法で保障された基本的人権を制約するにはどのような限界があるのですか。

答 今の憲法には、13条で、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は「公共の福祉」に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とすると規定しています。

 自民党の改憲案13条では、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は「公益又は公の秩序」に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とすると書かれています。
( 「公共の福祉」と「公益又は公の秩序」との意味)

 国民が基本的人権を有しているからといって、勝手気ままに又はわがままに、自分の権利を主張し始めると、他の人の権利を害してしまいかねません。 例えば、スーパー経営者が営業の自由があると言っても、産地不明の粗悪品を偽って良質の商品として売り出せば、消費者は健康を害する粗悪品を良質と信じて買って食し、 健康を害しかねません。
この場合、商品の生産者及びスーパーの経営者は一定の規制を受けてもやむを得ません。このように権利と権利がぶつかるときには調整原理が働きます。これが「公共の福祉」という意味です。

公益とは国家の利益

 他方、自民党の改憲草案では、何を公益とし、何を公の秩序とするかを国が決めて国民に従わせようとする用語で、 「公益」 とは、 『国家の利益』と言い、 「公の秩序」とは『国家の秩序』のことを言います。
(既に公益又は公の秩序による規制が始まっている)
 現憲法では、国民に知る権利があり、マスコミには国民の知る権利を担保するために報道の自由が保障されています。
 しかし、私たちは国民の知る権利、その担保としての報道の自由に対し、既に事実上規制が始まっていることに注目しておく必要があります。

2つの新聞社をつぶせ

 昨年6月25日の自民党本部で開かれた勉強会(9条の会に対抗するため発足した文化芸術懇話会)で、安倍政権からNHKの経営委員として任命された作家の百田尚樹氏が、 講師として、沖縄の2つの新聞社(琉球新報、 沖縄タイムス) を<絶対つぶさにゃあかん>と発言し、会に出席した議員から<広告収入がなくなるのが1番。経団連に働きかけてほしい> <新聞よりも民放だ。 (経験から)テレビのスポンサーにならないのが一番こたえることがわかった>等々という報道の自由をつぶしにかかるとんでもない話合いが自民党という権力の中枢でなされたとの報道がされました (朝日、2015年6月27日朝刊) 。

 また、マンションで自衛隊のイラク派遣に反対する反戦平和のビラ配布をした労働者を住居侵入罪で逮捕するなど、警察権力を使っての表現の自由弾圧が発生しています。

 今後、安倍内閣はテロの危険を口実にして、 「法の支配」を更に逸脱して実質的に「公益又は公の秩序」に基づく規制を先取りし、戦争法反対の集会の開催、反原発集会のデモへの参加などを制限し、抑圧を強化していく恐れがあります。

 もときた暗い道を、重い荷物を背負って歩かされるのはまっぴらごめんです。

 今のうちに、自由を抑圧するような極右的な動きに対して、これにまさる大きな反対運動をもって対抗していく必要があるのではないでしょうか。