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いきいき365日


知って役立つ逆流性食道炎の知識

戸塚病院内科医 池田 俊夫 イメージ写真


2016年6月 機関紙「医療生協かながわ」より記事を掲載しました。

誰もが経験したことのある食道逆流現象

 下を向いてしゃがみこんだとき、ウップと胃液がこみ上げてきた経験のある人は多いと思います、 それが食道への逆流現象です。

 そもそも食道への胃内容の逆流はちょっとした事で起こりやすいのです、まず乳児期にはお乳をのませた後にゲップをさせないと簡単に嘔吐してしまいます。

 これは、食道下部・噴門の括約筋がまだ発達していないからです。成長とともに発達し逆流しにくくなります。小児期・10代・20代・30代はもっとも発達している時期です。40代以後に括約筋が弱まり逆流は次第に生じやすくなってきます。高齢になると乳児期に逆戻りしてしまいます。そして食道炎を起こすのです。今回はその成り立ちから治療・予防までを解説します。

逆流性食道炎

 胃の粘膜には胃酸に対するバリアーがあります。バリアーのない食道粘膜は胃酸にさらされるとすぐ炎症を起こします。ですから常時逆流が生じやすい状態にあると食道下部を中心に粘膜に炎症が生じます。

逆流性食道炎の生じやすい人は

 年令性別でその成り立ちと頻度が微妙に異なります。

① 中年以降の男性に多くみられるのはメタボによる腹圧・ストレス(不規則な生活も含)による噴門括約筋の弛緩です。
 そのため胃液が逆流し食道炎を生じます。炎症はひどくなると潰瘍になり食道の短縮を起こします。するとますます逆流を起こしやすくなります。

② 次に60歳すぎ位からの女性ですが、椎間板の厚みの減少・骨粗しょう症による脊柱圧迫骨折・円背(えんばい)など脊柱の短縮が起き、食道裂孔ヘルニアなどによる食道のたるみが噴門括約筋の弛緩を生じ食道炎を起こしやすくなります。

③ 80歳位を過ぎると男女ともにさらにこの傾向が強まります。

④ また胃の手術をした人は逆流を起こしやすくなりますが胆汁の逆流と炎症が主体です。

その症状の特徴はどうでしょう

 典型的な症状は、むねやけ、もたれ、嚥下した物が通過するときの胸のあたりのつかえ感・痛み、刺激物を飲んだときの痛みも特徴です。他の病気と紛らわしい症状も出ることがあるので注意が必要です。狭心症のような胸痛、慢性の咳、咽頭部違和感・つかえ感、喘息様発作、不眠、簡単に嘔吐する等です。

最も危険な合併症は誤嚥性肺炎

 多くの高齢者は逆流性食道炎によって命にかかわる嚥下性肺炎が起きやすくなります。加齢とともに嚥下機能の低下が加わると、肺炎の危険が増加し、危険との隣り合わせの生活が続くことになりかねません。また潰瘍や炎症からの出血で貧血になったり食欲が低下したりすることもあります。

効果的な治療は?

 最強の制酸剤、プロトンポンプ阻害剤やH2ブロッカーといわれる注射や内服を使い治療をします。しかし高齢になると完全にコントロールすることは困難になります。それがこの病気の厄介なところなのです。

 また、ほかの制酸剤や粘膜保護剤も使いますが慢性化して寝ている間でも逆流を起こしやすくなってしまうのもこの病気の侮れないところです。

予防はあるのでしょうか?

 完全に予防することは困難です。効果的なのは体重減で、特にポッコリお腹をなくすことと臥位の時の上半身挙上が大切です。また、直接粘膜の刺激になる食べ物や飲み物は控えましょう。