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いきいき365日


高血圧と生活習慣

戸塚診療所所長 外山 久太郎 イメージ写真


2016年8月 機関紙「医療生協かながわ」より記事を掲載しました。

 高血圧における生活習慣の修正には
① 減塩:6g/日未満。
② 食事(野菜・果物・魚の積極的摂取、コレステロールや飽和脂肪酸摂取を控える)。
③ 減量:BMI 25以下。④ 運動:有酸素運動を毎日30分以上行う。
⑤ 節酒:エタノール 男性20?30?/日以下、女性10?20?/日以下。
⑥ 禁煙:禁煙の推進・受動喫煙の防止。
などが重要視され、勧められている。

文明が栄えるとともに塩分が増えた

 本来陸上の野生動物の食物には食塩は殆ど含まれていない。肉食動物で体重60㎏当り、食塩相当で1日2g程度、 草食動物で1日0.5g程度と言われている。
 人類も石器時代には食塩摂取量は1日0.5?3gとの報告もある。アマゾン原住民カノマミ族では、尿中ナトリウム排泄量が0に近く、収縮期血圧の平均値が男性約100㎜Hg、女性約90㎜Hgとの研究(INTERSALT)があり、人類の血圧も本来70?100㎜Hgくらいで、文明国での塩分摂取が増えるようになったのが、血圧上昇の最大要因と考えられている。

 減塩の降圧効果はDASH食や多くの欧米の研究で証明されているが、少なくとも6.5g/日まで食塩摂取量を減らさなければ有意の降圧は達成できていない。又ある研究によると降圧剤中止後の正常血圧維持に有効な減塩は5.6g/日以下であったようである。

更なる塩分制限

 近年日本人の食塩摂取量は徐々に低下傾向にあり、平成25年の国民健康栄養調査では男性 11.1g/日、女性9.4g/日と報告されているが、厚生労働省の平成27年版「日本人の食事摂取基準」では、食塩摂取量の目標値を男性8g/日未満、女性7g/日未満としている。

専門施設でも苦戦

 日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(2014)では、食塩摂取量は更に厳しく6g/日未満としているが、減塩を厳守・実行する事は現実には厳しい。例えばある施設で減塩指導を受けている高血圧患者の24時間家庭蓄尿で食塩排泄量を測定した結果、平均は男性10.0g/日、女性8.2g/日で、6g/日未満達成者は男性13.2%、女性25.7%、全体でも20.1%にとどまった。
 又24時間家庭蓄尿での食塩排泄量を、 平均観察期間8.6年、平均11.4回評価した結果、初回9.6g/日から11回目に8.2g/日まで低下したが8回目以降は横ばいで、高血圧専門施設でも6g/日未満にする減塩が如何に困難かを示している。

6g/日未満の達成率は専門病院に迫る

 医療福祉生協連が取り組んでいる「すこしお生活」の推進方針(2015年)には、ウロペーパーソルトや減塩モニターを使い1日の食塩摂取量を尿で測定(推定)する事や、又1983年から5年ごとに全国の医療福祉生協が24時間蓄尿塩分調査を実施して減塩に取り組んでいることが書かれている。
 2011年の24時間蓄尿塩分調査では参加者の1日平均塩分摂取量は9.49gで、そのうち6g/日未満を16.6%の人が達成している。これは減塩指導をしている高血圧専門病院の 20.1%に比し多少劣っているにしても、減塩レシピの「すこしおレシピコンテスト2015」を実施したりした今後の結果が大いに期待される数値である。

肥満大敵

 今回は高血圧対策の生活習慣の中で紙面の制約もあり、減塩のみについて書きましたが、食塩摂取量の最大の規定要因は体重で、肥満合併のある男性の減塩指導が最も困難とされている。飲酒も食塩摂取量が多くなる傾向にあり、減塩対策には体重減少、節酒なども併せて行なう事が重要である。