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いきいき365日


呼吸器内科専門医が語る長びく咳について

いずみ診療所 所長 呼吸器内科専門医 橋爪 敏彦 イメージ写真


2016年12月 機関紙「医療生協かながわ」より記事を掲載しました。

 咳の症状で病院を受診される患者さんは多く、咳の原因になる病気も多種多様です。診療所ですとその多くは風邪ですが、病院になりますと既に風邪の治療をしてもよくならないために紹介で受診されたりして、風邪以外の病気の頻度も多くなると思われます。

CTスキャンでの検査が有効

 病院で診察の結果、咳の原因がすぐにつきとめられれば良いのですが、時には種々の検査をしても診断がつかず、患者さんが咳に長く悩まされることも少なくありません。

 咳が長びくときはまず胸部レントゲン検査が行われるかと思います。肺炎、肺結核、肺癌などの多くはこの時点で診断がつきます。診断が難しいのは、胸部レントゲン写真でも異常なく、血液検査でも異常なく、さらには肺機能検査や喀痰検査などを行っても診断に結びつく異常所見が認められないときです。

 このようなときには一つの対策としてCT検査が検討されます。胸部レントゲン写真で異常が認められなくてもCTでは異常が発見できるということがあるからです。たとえば、過敏性肺炎や粟ぞく粒りゅう結核などの細かい粒状陰影を呈する病気はCTでないとわからないことがあります。また、間質性肺炎のようにすりガラス陰影というごく淡い濃度変化をきたす疾患もCTでないと診断できないことがあります。さらに、胸部レントゲン写真では発見しにくい場所に発生した肺癌や、気管や気管支の腫瘍や結核、気管支異物などもCTでないと診断は困難なことがあります。

 実際はこれらの頻度は多くないのですが、癌や結核のような重大な病気も含まれますので、長びく咳で診断がつかないときはCTを行うことを検討する必要があるかと思います。

喘息やアレルギーが原因の場合

 しかしCTまで行っても異常がなく診断に至らない場合も少なくありません。このような場合が本当に診断の難しい咳と言えます。そのような病気としては、咳がい喘ぜん息そく、アトピー咳がい嗽そう、副ふく鼻び 腔くう気管支症候群、胃食道逆流症、薬剤性咳嗽、心因性咳嗽、感染後咳嗽などがあります。

 咳喘息とは喘息類似の病気ですが、喘息と異なり呼吸するときにヒューヒューと音がする喘ぜん鳴めいがないため診断を難しくしています。喘息と同様に気道過敏性が亢こう進しんしていることの証明が診断に有用なのですが、この気道過敏性検査を行っているのは大学病院などの専門機関に限られることから、多くは気管支拡張剤などの治療を行って診断をしているのが実状かと思います。

 アトピー咳嗽も咳喘息と同様にその確定診断には特殊な検査が必要であり、抗アレルギー剤や吸入ステロイドなどの治療薬を投与してみて診断をつけることが多いと思われます。副鼻腔気管支症候群は副鼻腔炎に合併した気管支炎であり、咳以外に鼻汁・鼻閉などの症状を伴うときは耳鼻科的な検索も重要になります。

胃酸や服用中の薬も

 胃食道逆流が咳の原因になることがあります。
 胸やけ、のどの違和感、症状の食後の悪化などを認めましたら胃酸分泌抑制薬を使用することで咳が改善することがあります。この場合、咳の改善には長期を要することがあり、状況にもよりますが2か月間は投与して効果判定する必要があります。

 また、現在服薬中の薬が原因で咳が出ている可能性もあり内服薬に咳の副作用がないかどうかも確認する必要があります。感染後咳嗽とは風邪症状の後に長びく咳症状のことを言います。最初に風邪の症状で始まりその後咳が続きますが、徐々に改善傾向が認められるのが特徴です。

医療機関での相談をお勧めします

 以上は内科的な病気ですが、精神的な病気が原因で咳が続くこともあります。これもなかなか診断に難渋することが多いと思われます。その他にも、頻度は少ないですがさまざまな咳の原因はあると思われますので、長びく咳でお悩みの方は医療機関ご相談ください。