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いきいき365日


「共謀罪」は何が問題か(上)

稲生弁護士 イメージ写真

2017年4月01日
 機関紙「医療生協かながわ」の2017年4月に載った記事を掲載しました。

1 共謀罪と一般市民
 安倍首相は、「テロ等準備罪」(共謀罪)を整備し、国際組織犯罪防止条約(以下犯罪防止条約という)を批准しなければ、2020年のオリンピック、パラリンピックを開けないとして、今国会で共謀罪を成立させようとしています。

 しかし、安倍首相は、テロではなく一般市民でも「団体の性質が犯罪を行うことにある団体に一変したとき」は「組織的犯罪集団」として適用されると国会で答弁しました。

 「共謀罪」は、国家権力が、人間の尊厳と不可分な思想・良心の自由(憲法19条)を侵害し、人の心の奥底まで警察が監視できるようにするという恐ろしい法案です。小林多喜二が虐殺されたときの治安維持法の再来とも評され、過去3度国会に提案されたものの廃案となりました。

 一般市民の労働運動や平和運動も萎縮し、正しい権利の主張さえ控えてしまうおそれさえあります。共謀罪法案は市民の日常生活と無縁ではありません。

2 テロ準備罪は現行法で充分対処できる
 「テロ等準備罪」と称されていますが、我が国のテロ対策法は充実しています。

  1. 1)テロ関連条約のうち、核によるテロリズム行為防止に関連する国際条約を除く全てに批准しています。そして、条約上の行為を国内法で犯罪としています。

  2. 2)犯罪に対する我が国の刑事法は、「既遂」を処罰するのが原則です。未遂や予備や陰謀など、特に「内心」の処罰は例外です。なぜならば、個人の尊厳を守り(憲法13条)、国家権力による刑罰権の乱用を防止する憲法の諸規定、すなわち思想良心の自由、信教の自由(19条、20条)、表現の自由(21条)、令状主義(35条)と基本的に相容れないからです。 それでも、現行法には、組織犯罪に関連する重大犯罪について、予備罪(35項目)、準備罪(6項目)、共謀罪(13項目)、陰謀罪(8項目)があり、犯罪の未遂に至らない段階で処罰可能としています。

  3. 3)判例理論では、共謀共同正犯理論が存在し、未遂以前の「予備の共謀」なども処罰可能とされています。

  4. 4)銃の所持については、銃砲刀剣所持取締法によって、銃砲の所持や刀剣の所持自体が厳しく処罰されています。アメリカと違うところです。

 「犯罪防止条約」は、「自国の国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」としていますから、国内法で必要な刑罰が整っている我が国は、共謀罪を導入しなくてもテロに対処でき、条約を批准することは充分可能です(日弁連の意見書)。